RFIDの仕組み
RFIDシステムは、3つの要素で構成されています。RFIDタグ、RFIDリーダー(インテロゲーターとも呼ばれる)、取得したデータをITシステムやIoTに取り込むためのソフトウェア(ミドルウェアとも呼ばれる)です。 求められる性能、精度、信頼性を実現するためには、用途に応じたシステムの構成要素を慎重に選択する必要があります。
RFIDタグおよびラベル
RFIDタグにはさまざまな形状やサイズがあり、大きく「パッシブ」と「アクティブ」の2種類に分けられます。 最も一般的なタグはパッシブ型で、バッテリーなどの統合的なエネルギー供給を必要としないものです。パッシブタグは、通常、RFIDインレイと、それを物理的損傷から保護するための筐体で構成されています。 インレイは、デジタルIDと追加データを格納する小型のシリコンマイクロチップで構成され、紙やプラスチック(PET)フィルムなどの薄い基材上のアンテナに取り付けられています。パッシブタグのアンテナは、リーダーから受信した電波をマイクロチップに送り、そこでエネルギーを回収し、リーダーに電波を送り返すために利用されます。
インレイは非常に薄いため、従来のラベルに埋め込むだけで、RFIDへと加工することができます。また、非常に過酷な環境や動物への注入にも対応できるよう、非常に堅牢なプラスチック(ハードタグ)や生体適合性の高いガラス(ガラスタグ)に組み込むこともで可能です。
RFIDの分類
RFIDシステムは、主に3つの無線周波数範囲に分類されます。低周波(LF)、高周波(HF)、超高周波(UHF)です。これらは、それぞれ用途や最大の読み取り距離、使用するRFIDタグやリーダーの種類などが異なります。
超高周波(UHF)
UHF帯のRFIDシステムは、860~960MHzの周波数帯で動作します。 一般的な読み取り距離は、近距離から20メートル以上まで対応しており、在庫管理やサプライチェーン管理、スマートマニュファクチャリング、航空機のバゲージトラッキング、スポーツの計測など、幅広い用途に対応します。
周波数範囲内には、規制機関によって定義された2つの主要な地域サブバンドが存在します。 欧州電気通信標準化機構(ETSI)では865~868MHz、米国連邦通信委員会(FCC)では902~928MHzをRFID用の周波数範囲として定めています。 当社のRFIDタグやインレイの中には、FCCまたはETSIのいずれかの周波数に限定されている製品もありますが、最近の製品の多くはどちらのバンドにも対応しています。
UHF帯は、HF帯やLF帯に比べて読み取り距離が長く、さまざまなサイズや形状のインレイやタグを低コストで利用できるほか、大量のアイテムを高速で読み取ることができますが、金属や導電性素材、液体による電波干渉を受けやすいという難点があります。
高周波(HF)と近距離無線通信(NFC)
HFとNFCのRFIDシステムは、13.56MHzの周波数帯で動作し、読み取り距離は近距離から50センチまで対応しています。代表的な用途としては、図書館のメディア管理、製造オートメーション、カジノでのチップ管理、IDカード、NFC支払いカードやスマートフォンアプリによる非接触型決済、顧客エンゲージメントなどが挙げられます。 HFタグには専用のリーダーが必要ですが、NFCタグは数センチの距離であれば、ほとんどのスマートフォンで読み取ることができます。
現在、何十億台ものNFC対応スマートフォンが市場に出回っており、多くの消費者が非接触型の支払いに慣れてきていることから、NFCタグを消費者エンゲージメントや、その他の新しい消費者中心のアプリケーションに活用する大きなチャンスが到来しています。
低周波(LF)
ほとんどのLFシステムは、125~134 kHzの周波数帯で動作し、読み取り距離は近距離から10センチまで対応しています。 代表的な活用分野は、動物の識別、アクセスコントロール、カーアクセサリなどがあり、また液体や金属の密度が高い環境条件に対応しています。
UHFやHFに比べてデータ伝送速度や読み取り距離が短く、また低周波数であることから、厳しい環境下での活用にも対応できます。