盗難、過剰在庫、廃棄物の削減
多くの化粧品ブランドや小売業者にとって大きな課題となっているのが、盗難とそれに伴う商品の流用です。またこれによる業界の損失は数十億ドルにのぼります。このような損失は、もちろん商品のコストにも起因しますが、それ以上に重要なのは、ブランドエクイティに与えるダメージです。盗まれた商品や流用された商品の大半は、不正なチャネルで販売され、ブランドは製品の完全性や安全性、ブランドメッセージを管理することができなくなります。盗難は小売店でも発生しますが、より重大な損失は、工場から流通、小売店までのサプライチェーンで発生する盗難です。今回のプロジェクトでは、RFIDタグが取り付けられた商品を、配送センターから小売店に搬入する際の監査を実施しました。その結果、配送センターから出荷された商品が小売店に到着していないという、重大な損失が確認されました。RFIDとそれが持つデジタルアイデンティティによって実現されるサプライチェーンの完全な透明性は、個々の商品の完全なトラッキングを可能にするため、ブランドや小売業者は、盗難・流出が発生している場所を正確に特定し、またそれを軽減するために適切な行動を取ることが可能になります。
また、個品につけたRFIDは、化粧品の廃棄ロスを減らすことができます。今回のプロジェクトで対象となった小売店で、大幅な過剰在庫が発生していることが確認され、店頭やオンラインでの在庫や収益を増やしたまま、手持ちの在庫を約25%削減することができました。この削減効果を数百店舗に適用すれば、運転資金の大幅な節約に繋がります。また、この削減により、サプライチェーンや店舗に負担をかけることなく、より幅広い品揃えの商品を生産・提供できる柔軟性が生まれます。
また、ある店舗では、季節外れである、または賞味期限切れ、といった理由で、20%以上の在庫が販売不可となっていました。しかし、これまでにないレベルの可視性によって、化粧品ブランドや小売業者は、大量の賞味期限切れの製品やパッケージの廃棄を避けることができ、さらに、それらの製造に必要な原材料、エネルギー、またその他の資源の消費を削減することができます。これは、世界で1,200億個以上のパッケージを生産している業界にとって重要なことです(*2)。化粧品関係の消費者が、ブランドに対しサステナビリティーにおける高い基準の責任を求める声が高まる中、過剰な在庫を避け、廃棄物を減らし、透明性を確保するため、在庫管理を抜本的に改善することは、ブランドの信頼とポジティブな顧客体験を構築するために不可欠です。